飲食業の資金繰りを改善する方法|食材費・人件費・店舗固定費への対策
飲食業では、売上が日々発生する一方、食材費、人件費、家賃、水道光熱費など多くの支払いが継続的に発生します。
現金売上が多ければ資金が回りやすいように見えますが、キャッシュレス決済の入金待ち、食材の廃棄、予約のキャンセル、来店客数の減少などによって、手元資金が急速に減少することがあります。
また、売上が伸びても、食材価格や人件費、デリバリー手数料が増加すれば利益は残りません。売上高だけでなく、実際に現金が残る仕組みになっているかを確認する必要があります。
この記事では、飲食業の資金繰りが苦しくなる主な原因、具体的な改善策、利用を検討できる資金調達方法を解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、融資や契約、補助金などの利用結果を保証するものではありません。制度や条件は変更される場合があるため、利用前に各機関の公式情報をご確認ください。
この記事の要点
- 売上だけでなく、食材費と人件費を含めた利益を確認します
- メニュー別の原価と販売数を把握します
- 廃棄量と仕入数量を毎日記録します
- 家賃などの固定費を支払うために必要な売上を計算します
- キャッシュレス売上は実際の入金日で管理します
- 資金不足が予想される段階で金融機関へ相談します
目次
- 飲食業の資金繰りが苦しくなる主な原因
- 飲食店で確認したい資金繰りのポイント
- 資金繰りを改善する具体的な方法
- キャッシュレス決済とデリバリーの注意点
- 飲食業が利用を検討できる資金調達方法
- 融資相談で準備したい資料
- 資金繰り改善の具体例
- まとめ
飲食業の資金繰りが苦しくなる主な原因
食材費が上昇している
肉、魚、野菜、米、油、調味料などの価格が上昇すると、同じメニューを提供しても利益が減少します。
仕入価格の上昇を販売価格へ反映できなければ、来店客数と売上が変わらなくても手元に残る資金は少なくなります。
単に仕入総額を見るのではなく、食材別の単価と使用量を確認する必要があります。
食材の廃棄が発生する
飲食店では、安全性と品質を維持するため、食材の消費期限を管理しなければなりません。
来店客数を多く見積もって仕入れや仕込みを行うと、売れ残った食材を廃棄することになります。廃棄した食材は売上にならず、仕入代金だけが支出されます。
廃棄額が少額に見えても、毎日積み重なると年間では大きな負担になります。
人件費が固定的に発生する
飲食店では、調理、接客、清掃、仕込みなどに人員が必要です。
来店客数が少ない時間帯でも、一定人数を配置すれば人件費が発生します。反対に人員を減らしすぎると、サービス品質や回転率が低下する可能性があります。
曜日や時間帯ごとの売上に合わせて、人員配置を調整する必要があります。
店舗の固定費が大きい
家賃、設備リース料、保険料、通信費、POSシステム利用料などは、売上が少ない月にも発生します。
水道光熱費も厨房設備や空調の使用によって高額になりやすく、売上減少時の負担が重くなります。
店舗を維持するだけで毎月いくら必要なのかを明確にすることが重要です。
来店客数が季節や天候に左右される
飲食店の売上は、曜日、季節、天候、周辺イベントなどの影響を受けます。
雨天や猛暑、長期休暇、近隣施設の休業などによって、予想より来店客数が減少する場合があります。
過去の平均売上だけで資金計画を作らず、売上が減少した場合も想定する必要があります。
キャッシュレス売上の入金に時間がかかる
クレジットカードやQRコード決済では、販売日と銀行口座への入金日が異なります。
レジ上では売上が発生していても、入金前は食材の仕入れや給与の支払いに使えません。また、決済手数料が差し引かれるため、売上高と実際の入金額も異なります。
決済事業者ごとの締め日、入金日、手数料を整理してください。
デリバリー売上の利益が残らない
デリバリーサービスを利用すると新たな売上を獲得できますが、販売手数料、容器代、追加の調理負担などが発生します。
店内と同じ価格で販売した場合、注文が増えるほど利益率が低下する可能性があります。
売上高だけでなく、注文一件当たりの実際の利益を確認する必要があります。
開業時や改装時に資金を使いすぎる
内装工事、厨房設備、什器、看板、保証金など、飲食店の開業には多くの資金が必要です。
開業資金を設備へ使い切ると、売上が安定するまでの家賃、人件費、仕入代金を支払えません。
開業費と、開業後の運転資金を分けて確保することが重要です。
飲食店で確認したい資金繰りのポイント
メニュー別の原価
メニューごとに、使用する食材の量と仕入単価を確認します。
原価率は、簡易的には次の式で計算できます。
原価率=食材原価÷販売価格×100
同じ価格帯のメニューでも、原価率や注文数は異なります。原価率が低いだけでなく、販売数と粗利益額も確認してください。
人件費率
人件費率は、次の式で確認できます。
人件費率=人件費÷売上高×100
給与だけでなく、社会保険料、交通費、求人費、残業代なども含めて確認します。
月全体の比率に加え、曜日や時間帯ごとの売上と勤務人数を比較することが重要です。
食材費と人件費の合計
飲食店では、食材費と人件費の合計が収益へ大きく影響します。
ただし、適正な割合は、業態、価格帯、調理工程、立地などによって異なります。一律の目標値だけで判断せず、自店の過去実績や事業計画と比較してください。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高は、利益がゼロになる売上高の目安です。
簡易的には次の式で計算します。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
家賃や人件費などの固定費が高ければ、赤字を避けるために必要な売上も増えます。
現金の最低残高
月末残高だけでなく、給与、家賃、仕入代金の支払直後に残る金額を確認します。
月全体では入金が支出を上回っていても、入金前に支払いが集中すれば、一時的に資金不足が発生します。
資金繰りを改善する具体的な方法
メニュー別に利益を確認する
各メニューについて、次の項目を一覧にします。
- 販売価格
- 食材原価
- 注文数
- 粗利益額
- 調理時間
- 廃棄の発生状況
- デリバリー利用時の手数料
原価率が低くても注文されないメニューは、店舗全体の利益に貢献しません。販売数と利益額の両方を確認してください。
仕入れと廃棄を毎日記録する
仕入金額だけでなく、廃棄した食材の種類、数量、理由を記録します。
記録を続けると、曜日、天候、時間帯などによる傾向を把握できます。予約数や過去の来店実績に合わせて仕入量と仕込量を調整してください。
売れにくいメニューを見直す
メニュー数が多いと、多種類の食材を保有する必要があり、在庫と廃棄が増える可能性があります。
注文数が少なく、他のメニューと食材を共有できない商品は、販売中止や期間限定化を検討します。
反対に、複数メニューで使用できる食材を増やせば、在庫を活用しやすくなります。
価格と量を見直す
食材価格が上昇した場合は、値上げだけでなく、使用量、付け合わせ、セット内容、メニュー構成を見直す方法があります。
ただし、品質や顧客満足度を大きく下げる変更は、来店客数の減少につながります。変更後の原価と顧客への影響を比較してください。
時間帯別に人員を配置する
POSデータなどを利用し、曜日と時間帯ごとの売上、客数、客単価を確認します。
来店客数の少ない時間帯は、シフトや営業時間を調整します。一方、繁忙時間帯は人員不足によって回転率が落ちないようにします。
予約キャンセルへの対応を決める
コース料理や団体予約では、事前に食材を仕入れるため、直前キャンセルによる損失が大きくなります。
キャンセル規定を明示し、必要に応じて予約金や事前決済を導入します。予約時に顧客が内容を確認できる状態にすることが重要です。
固定費を見直す
家賃、設備リース、通信費、予約システム、音楽サービス、清掃契約などを一覧にします。
利用頻度の低いサービスは解約や料金プランの変更を検討します。設備の稼働時間や空調設定を見直し、水道光熱費の削減も検討してください。
資金繰り表を毎週更新する
最低でも3〜6か月先について、次の項目を記録します。
- 現金売上
- キャッシュレス売上の入金
- デリバリー売上の入金
- 食材の仕入代金
- 給与と社会保険料
- 家賃
- 水道光熱費
- 税金
- 借入金の返済
- 設備代金
売上見込みは、通常の場合だけでなく、来店客数が減少した場合も作成してください。
キャッシュレス決済とデリバリーの注意点
キャッシュレス決済は、決済事業者ごとに次の条件を確認します。
- 締め日
- 入金日
- 入金回数
- 決済手数料
- 振込手数料
- 返金時の処理
- 早期入金サービスの利用料
デリバリーサービスでは、販売手数料だけでなく、容器、袋、カトラリー、広告、値引きキャンペーンなどの費用も確認します。
店内販売とデリバリー販売を分けて原価を計算し、注文一件当たりの利益を把握してください。
飲食業が利用を検討できる資金調達方法
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫では、飲食業を含む小規模事業者が、運転資金や設備資金について相談できます。
開業時は、物件費、内装工事、厨房設備、運転資金などの内訳を記載した創業計画書や見積書などを準備します。
既存店の場合は、決算書や試算表に加えて、売上推移、資金繰り表、改善計画などを整理します。
制度や条件は変更されるため、日本政策金融公庫の公式サイトで最新情報をご確認ください。
信用保証協会付き融資
信用保証協会の保証を利用して、銀行や信用金庫から融資を受ける方法です。
自治体によっては、保証料や利子の負担を軽減する制度融資があります。所在地の自治体、信用保証協会、金融機関へご確認ください。
民間金融機関の融資
日常の運転資金、店舗改装費、厨房設備などについて相談できます。
日頃から売上実績、試算表、資金繰り表などを共有し、資金不足が深刻になる前に相談することが重要です。
リース・割賦
厨房設備、POSレジ、空調設備などを一括購入せず、リースや分割払いで導入する方法です。
初期支出を抑えられる可能性がありますが、支払総額、中途解約、所有権、修理費用などを確認してください。
補助金・助成金
店舗改装、省力化設備、ITシステム、販路開拓などで、補助制度を利用できる場合があります。
ただし、採択前に発注すると対象外になる制度や、支出後に補助金が入金される制度があります。補助金とは別に、支払いに必要な資金を確保してください。
ファクタリング
宴会、ケータリング、法人向け弁当などによる売掛債権がある場合は、ファクタリングを利用できる可能性があります。
通常の現金売上や一般消費者のカード決済が、すべてファクタリングの対象になるわけではありません。対象債権と契約条件を確認する必要があります。
融資相談で準備したい資料
金融機関へ相談する場合は、次の資料を準備します。
- 直近の決算書または確定申告書
- 最新の試算表
- 資金繰り表
- 月別の売上推移
- 店舗別の売上と利益
- メニュー別の原価
- 借入金の返済予定表
- 店舗の賃貸借契約書
- 設備や工事の見積書
- 許認可証
- 今後の改善計画
- 必要資金の内訳
運転資金を申し込む場合は、「運転資金500万円」だけでなく、食材仕入れ、人件費、家賃、水道光熱費などに分けて説明します。
資金繰り改善の具体例
月商500万円の飲食店を例に考えます。
毎月の主な支出は次のとおりです。
- 食材費:180万円
- 人件費:160万円
- 家賃:50万円
- 水道光熱費:25万円
- 決済・デリバリー手数料:20万円
- その他経費:35万円
- 借入返済:20万円
- 合計:490万円
月商500万円でも、支払い後に残る金額は10万円です。設備の故障や売上減少が発生すると、すぐに資金不足となる状態です。
この店舗で食材の廃棄を月15万円減らし、シフト調整で人件費を月10万円削減し、不採算なデリバリーメニューを見直して手数料負担を月5万円減らせれば、毎月の資金余力は合計30万円改善します。
ただし、単純に食材の品質や人員を削るのではなく、廃棄記録、時間帯別売上、メニュー別利益を確認したうえで改善することが重要です。
まとめ
飲食業の資金繰りでは、売上だけでなく、食材費、人件費、家賃、水道光熱費などを含めて現金が残るか確認する必要があります。
まず、メニュー別の原価と販売数、食材の廃棄、人件費、キャッシュレス売上の入金日を整理してください。そのうえで、3〜6か月先までの資金繰り表を作成します。
メニュー構成、仕入量、廃棄、人員配置、営業時間、固定費を継続的に見直すことが重要です。
資金不足が予想される場合は、預金が尽きるまで待たず、日本政策金融公庫、信用保証協会、銀行、信用金庫などへ早めに相談してください。




