返済期間はどう決める?毎月返済額と利息の考え方
融資を受けるときは、借入額や金利だけでなく「何年かけて返済するか」も重要です。
返済期間を短くすると支払利息を抑えやすい一方、毎月の返済負担が大きくなります。反対に、返済期間を長くすると毎月の負担は軽くなりますが、借入残高が長く残り、支払利息も増えます。
大切なのは、最短期間で返すことではありません。売上の減少や入金の遅れが発生しても、資金繰りを維持できる返済期間を選ぶことです。
※本記事は一般的な情報を整理したもので、融資の承認や特定の条件を保証するものではありません。実際の返済条件は、金融機関、融資制度、審査結果などによって異なります。
この記事の要点
- 返済期間を短くすると、毎月返済額は増えるものの総支払利息は少なくなります。
- 返済期間を長くすると、毎月返済額は減るものの総支払利息は増えます。
- 返済可能額は売上ではなく、返済に回せる実際のキャッシュから考えます。
- 設備資金の返済期間は、設備を使用できる期間とのバランスも重要です。
- 売上減少や入金遅延を想定したうえで、余裕のある返済計画を作ります。
目次
- 返済期間によって何が変わるのか
- 1,000万円を3年・5年・7年で返す場合
- 毎月返済額は何を基準に決めるか
- 運転資金と設備資金の考え方
- 元金均等返済と元利均等返済の違い
- 既存借入がある場合の確認点
- 無理のない返済期間を決める手順
- 返済期間を長くすれば安全とは限らない
- まとめ
返済期間によって何が変わるのか
同じ金額を同じ金利で借りても、返済期間によって次の項目が変わります。
- 毎月の元金返済額
- 毎月の返済総額
- 借入残高が減る速度
- 完済までに支払う利息
- 将来追加融資を受ける際の借入残高
- 毎月の資金繰りに残る余裕
一般的には、返済期間を短くすると毎月返済額が増え、総支払利息は減ります。返済期間を長くすると毎月返済額は減りますが、利息を支払う期間が長くなります。
信用保証協会付き融資には、長期借入を含むさまざまな保証制度があります。ただし、利用できる制度や期間は一律ではないため、金融機関や地域の信用保証協会への確認が必要です。全国信用保証協会連合会も、事業者のニーズに合わせた制度について、最寄りの信用保証協会への相談を案内しています。
1,000万円を3年・5年・7年で返す場合
借入額1,000万円、年利2%、元金均等返済、据置期間なしとして比較してみます。
| 返済期間 | 毎月の元金返済額 | 初回返済額の目安 | 総支払利息の概算 |
|---|---|---|---|
| 3年・36回 | 約27万7,778円 | 約29万4,445円 | 約30万8,333円 |
| 5年・60回 | 約16万6,667円 | 約18万3,334円 | 約50万8,333円 |
| 7年・84回 | 約11万9,048円 | 約13万5,715円 | 約70万8,333円 |
元金均等返済では、借入残高が減るにつれて利息も減るため、実際の返済額は初回が最も大きく、その後少しずつ減っていきます。
この例では、3年返済と7年返済で、初回返済額に約15万9,000円の差が生じます。一方、7年返済の総支払利息は、3年返済より約40万円多くなります。
つまり、返済期間は単純に「長いほうが得」「短いほうが得」と判断できません。
- 毎月の資金繰りを優先するなら、一定の長さを確保する
- 総支払利息を抑えたいなら、返済可能な範囲で短くする
- 売上の変動が大きい事業では、余裕を持たせる
- 将来の追加借入を考えるなら、借入残高の減り方も確認する
なお、この計算は概算です。実際には返済方式、返済日、端数処理、保証料、手数料などによって金額が変わります。
毎月返済額は何を基準に決めるか
毎月返済額を売上高だけで決めるのは危険です。
売上が多くても、仕入代金、人件費、家賃、税金、設備投資などの支払いが多ければ、返済に回せる現金は限られます。
簡易的な返済原資の見方
金融機関が返済能力を確認するときに使う考え方の一つが、次の算式です。
簡易キャッシュフロー=税引後利益+減価償却費
例えば、税引後利益が年間300万円、減価償却費が年間200万円なら、簡易キャッシュフローは年間500万円です。
ただし、この500万円をすべて借入返済に使えるわけではありません。
- 売掛金の増加
- 在庫の増加
- 税金や社会保険料の支払い
- 設備の修繕・更新
- 役員報酬や個人事業主の生活費
- 季節的な資金需要
これらを考慮すると、実際に返済へ回せる金額は少なくなる可能性があります。
経済産業省の「ローカルベンチマーク」でも、財務情報だけでなく、商流や業務フロー、事業の強みなどを含めて経営状態を把握する考え方が示されています。
運転資金と設備資金の考え方
返済期間は、資金の使い道によっても考え方が異なります。
運転資金の場合
運転資金は、仕入代金、人件費、外注費、家賃など、日常的な事業活動に使用する資金です。
返済期間を考える際は、次の点を確認します。
- 売上代金を回収するまでの期間
- 仕入代金を支払う時期
- 季節による売上変動
- 賞与や納税による大きな支出
- 赤字を解消するまでの見込み
- 受注増加に伴う先行支出
例えば、受注から入金まで3か月かかる建設業では、入金前に材料費や外注費の支払いが発生します。短すぎる返済期間を設定すると、入金前の支出と融資返済が重なり、資金繰りが悪化する可能性があります。
設備資金の場合
設備資金は、機械、車両、店舗設備、工場設備などを購入するための資金です。
設備資金では、設備から利益を得られる期間と返済期間のバランスが重要です。
例えば、5年程度で買い替える予定の車両を10年以上かけて返済すると、車両を買い替えた後も以前の借入が残る可能性があります。
一方、高額な機械を短期間で返済しようとすると、設備が利益を生み出す前に返済負担が重くなることがあります。
設備資金では、次の項目を照らし合わせます。
- 設備の使用予定期間
- 法定耐用年数
- 設備によって増える利益や削減できる費用
- 修繕や更新が必要になる時期
- 金融機関や制度上の融資期間
法定耐用年数は税務上の減価償却期間であり、実際に使用できる期間と必ず一致するわけではありません。返済期間を決める際は、実際の使用見込みも確認しましょう。
参考:国税庁「耐用年数表」
元金均等返済と元利均等返済の違い
返済期間と一緒に確認したいのが、返済方式です。
元金均等返済
毎月返済する元金を一定にする方法です。
借入残高が減るにつれて利息も減るため、毎月返済額は徐々に少なくなります。
メリットは、元金の減少が比較的早く、同じ金利・期間なら元利均等返済より総支払利息を抑えやすいことです。
一方、返済開始直後の負担が大きくなります。
元利均等返済
元金と利息を合わせた毎月返済額を、原則として一定にする方法です。
毎月の支払額が分かりやすいため、資金繰り計画を立てやすい点がメリットです。
一方、返済開始直後は返済額に占める利息の割合が大きく、元金の減り方は元金均等返済より緩やかになります。
融資商品によって利用できる返済方式は異なるため、申込み前に確認が必要です。
既存借入がある場合の確認点
すでに借入がある場合は、新しい融資だけでなく、すべての借入を合算して考えます。
例えば、新しい借入の返済額が月15万円でも、既存借入の返済が月30万円あれば、毎月の返済総額は45万円です。
最低限、次の一覧を作っておきましょう。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 金融機関名 | 借入先の名称 |
| 当初借入額 | 最初に借りた金額 |
| 現在残高 | 現在残っている元金 |
| 金利 | 現在適用されている金利 |
| 毎月返済額 | 元金と利息を含む支払額 |
| 最終返済日 | 完済予定日 |
| 保証の有無 | 信用保証協会、担保、保証人など |
| 資金使途 | 運転資金、設備資金など |
借入金一覧表を作ると、特定の時期に返済が集中していないか、新しい借入を加えても資金繰りを維持できるかを確認しやすくなります。
無理のない返済期間を決める手順
1.年間の返済可能額を計算する
税引後利益と減価償却費を起点にして、在庫や売掛金の増加、設備投資、納税などを差し引きます。
2.既存借入の年間返済額を確認する
返済可能額から既存借入の年間元金返済額を差し引き、新しい借入の返済に回せる金額を見ます。
3.売上減少を想定する
現在の業績だけでなく、次のような厳しい条件でも返済できるか確認します。
- 売上が10%減少する
- 粗利益率が低下する
- 売掛金の入金が1か月遅れる
- 原材料費や人件費が上昇する
- 主要取引先からの受注が減る
4.月別の資金繰り表で確認する
年間では返済できるように見えても、賞与、納税、仕入れが重なる月に資金不足になることがあります。
少なくとも今後12か月分の資金繰り表を作り、月末現預金が不足しないか確認しましょう。
東京信用保証協会では、収支計画や資金繰りを確認するための経営支援ツールを公開しています。
5.複数の返済期間を比較する
3年、5年、7年など、複数の返済期間について次の項目を比較します。
- 毎月返済額
- 年間返済額
- 総支払利息
- 3年後・5年後の借入残高
- 売上減少時の月末現預金
- 設備の更新予定
返済額だけでなく、返済後にいくら現金が残るかを見ることが重要です。
返済期間を長くすれば安全とは限らない
返済期間を長くすると毎月返済額は減りますが、必ずしも安全になるわけではありません。
借入残高が長期間残る
返済期間が長いほど元金の減少が遅くなり、将来追加融資を申し込む時点でも多くの借入残高が残る可能性があります。
総支払利息が増える
毎月の負担が軽くても、利息を支払う期間が長くなるため、総支払額は増えます。
設備の更新時期と重なる
古い設備の借入が残ったまま新しい設備を購入すると、新旧両方の返済が重なる場合があります。
経営規律が緩む可能性がある
手元資金に余裕があるように見えても、返済期間中に不要な支出を増やすと、将来の返済余力が失われます。
長期返済は、資金繰りに余裕を作るための選択肢です。ただし、返済期間中も借入残高と資金繰りを定期的に確認する必要があります。
据置期間を利用する場合の注意点
融資によっては、返済開始後の一定期間、元金返済を行わず、利息のみを支払う据置期間を設定できる場合があります。
創業直後や設備導入直後など、利益が出るまで時間がかかる場合には有効です。
ただし、据置期間中は元金が減りません。その分、据置終了後の毎月返済額が増えたり、完済までの期間が延びたりする可能性があります。
据置期間は「返済が免除される期間」ではない点に注意しましょう。
全国信用保証協会連合会の保証協会団信に関する試算ページでも、借入期間や元金返済据置期間を分けて入力する形式になっています。ただし、これは団信特約料の参考試算であり、すべての融資に同じ期間条件が適用されるという意味ではありません。
まとめ
返済期間を決めるときは、毎月返済額の低さだけで判断してはいけません。
- 短期返済は毎月負担が大きいものの、元金が早く減り、総支払利息を抑えやすい
- 長期返済は毎月負担を軽くできるものの、借入残高が長く残り、総支払利息が増える
- 返済原資は売上ではなく、事業から実際に生み出せるキャッシュで考える
- 運転資金では入金と支払いの周期、設備資金では設備の使用期間を確認する
- 既存借入を含めた返済総額を月別資金繰り表で確認する
- 売上減少や入金遅延が起きても返済できる余裕を持たせる
融資を受けた直後だけでなく、返済期間中の納税、設備更新、追加の資金需要まで考えて返済期間を決めることが、安定した資金繰りにつながります。
参考資料
※制度や融資条件は変更される場合があります。利用を検討する際は、金融機関、信用保証協会、税理士、中小企業診断士などに最新情報をご確認ください。




