資金繰り表の作り方|利益が出ていても資金不足になる理由と計算例
売上や利益が増えていても、仕入代金、外注費、人件費、税金などの支払時期によっては、手元の資金が不足することがあります。
損益計算書で利益を確認するだけでは、「来月末の支払いにいくら不足するのか」「融資をいつまでに相談すべきか」を把握できません。
将来の入金と支出を月ごとに整理し、預金残高の推移を予測するために使用するのが資金繰り表です。
資金繰り表を作成すると、資金不足が発生してから調達先を探すのではなく、数か月前から金融機関への相談、売掛金の回収、支払条件の調整などを進められます。
本記事では、資金繰り表の基本的な項目、計算方法、具体的な記入例、利益と現金が一致しない理由、作成後に確認したいポイントを解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。会計処理、税務判断、融資申込みなどについては、税理士、金融機関その他の専門家へご相談ください。
この記事の要点
- 資金繰り表は将来の現金・預金残高を予測する表です
- 利益と資金の増減は一致しないことがあります
- 売上ではなく実際の入金予定を記載します
- 経費ではなく実際の支払予定を記載します
- 借入金の入金と元金返済も反映します
- 最低でも今後3か月、できれば6~12か月程度を作成します
- 予定と実績の差を毎月確認して更新することが大切です
- 資金不足が予測されたら、不足する前に対策を始めます
目次
- 資金繰り表とは
- 利益が出ていても資金不足になる理由
- 資金繰り表の基本構造
- 月初繰越残高を入力する
- 収入項目を入力する
- 支出項目を入力する
- 財務収支を入力する
- 翌月繰越残高を計算する
- 資金繰り表の具体的な記入例
- 業種ごとに追加したい項目
- 資金繰り表を作る際の注意点
- 資金不足が見つかった場合の対応
- 金融機関へ提出する際のポイント
- まとめ
資金繰り表とは
資金繰り表とは、一定期間の現金や預金の入出金をまとめ、将来の残高を予測する表です。
一般的には、月ごとに次の金額を記載します。
- 月初の現金・預金残高
- 売上代金などの入金
- 仕入れや経費などの支払い
- 借入金の入金
- 借入金元金の返済
- 設備購入などの支払い
- 月末の現金・預金残高
基本的な計算式は次のとおりです。
翌月繰越残高 = 月初繰越残高 + 当月の収入 − 当月の支出
例えば、月初の預金残高が500万円、当月の入金が800万円、当月の支出が900万円なら、月末残高は400万円です。
500万円 + 800万円 − 900万円 = 400万円
この400万円が、翌月の月初繰越残高になります。
資金繰り表と損益計算書の違い
損益計算書は、一定期間の売上、費用、利益を表す書類です。
資金繰り表は、実際の現金・預金の入出金と残高を表します。
売上を計上した月と代金を回収する月が異なる場合や、費用を計上した月と支払う月が異なる場合があるため、両者の数字は一致しません。
利益が出ていても資金不足になる理由
黒字であっても、手元の現金が不足することがあります。
これは、会計上の利益と実際の資金の動きが異なるためです。
売掛金の入金が後になる
商品を100万円で販売し、今月の売上として計上しても、取引先からの入金が2か月後であれば、今月の預金は増えません。
一方、その商品の仕入代金を先に支払う必要があれば、売上入金より前に資金が減少します。
在庫の仕入れが先になる
将来販売する商品や原材料を仕入れると、現金は減少します。
在庫は購入した時点ですべて費用になるとは限らないため、利益と現金の減少時期に差が生じます。
売上増加に備えて在庫を増やした結果、利益が出ていても資金繰りが苦しくなる場合があります。
借入金の元金返済は費用にならない
借入金の元金返済は現金を減少させますが、損益計算書上の費用にはなりません。
損益計算書では利益が出ていても、利益を上回る元金返済があると、預金残高が減少する可能性があります。
設備購入時に資金が減る
機械や車両などの固定資産を購入すると、購入代金の支払いによって資金が減少します。
しかし、会計上は購入代金の全額を一度に費用とせず、耐用年数にわたって減価償却費として計上するのが一般的です。
このため、設備購入時には大きな資金支出があっても、損益計算書へ計上される費用は一部になります。
税金の支払いが後から発生する
法人税や消費税などは、対象期間の終了後に支払うものがあります。
決算時に利益が出ていても、納税資金を残していなければ、納付時期に資金が不足する可能性があります。
売上が急増している
売上の増加はよいことですが、入金より前に仕入れ、外注費、人件費などが増える場合があります。
売上が急増するほど先行支出も増え、運転資金が不足するケースがあります。
資金繰り表の基本構造
資金繰り表の様式は一つに決まっているわけではありません。
まずは次の区分で作成すると整理しやすくなります。
前月繰越
前月末時点の現金と普通預金などの残高です。
営業収入
本業によって得られる入金です。
- 現金売上
- 売掛金の回収
- 前受金
- その他の営業収入
営業支出
本業を続けるための支払いです。
- 現金仕入れ
- 買掛金の支払い
- 外注費
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- 広告費
- 運送費
- その他の経費
営業収支
営業収入から営業支出を差し引いた金額です。
営業収支 = 営業収入 − 営業支出
営業収支が継続的にマイナスの場合、本業の入出金だけでは資金を維持できていない可能性があります。
財務収入
借入れなどによる資金の増加です。
- 金融機関からの借入金
- 役員や事業主からの借入れ
- 増資
- その他の資金調達
財務支出
借入金の元金返済などです。
- 長期借入金の元金返済
- 短期借入金の返済
- 役員借入金の返済
- リース債務などの支払い
借入金の利息は営業支出または財務支出のいずれかに記載する方法があります。毎月同じ区分で管理できれば問題ありません。
設備収支・投資収支
設備の購入や資産売却などを別に管理する場合に使用します。
- 機械や車両の購入
- 店舗の内装工事
- 敷金や保証金
- 固定資産の売却代金
- 保険の解約返戻金
翌月繰越
すべての入出金を反映した後の現金・預金残高です。
翌月繰越がマイナスになる月があれば、その月までに資金調達や支出の見直しが必要です。
月初繰越残高を入力する
資金繰り表の最初に、作成開始時点の現金・預金残高を入力します。
対象にするものは、原則として事業に使用できる資金です。
- 手元現金
- 普通預金
- 当座預金
- 事業用として使用できるその他の預金
定期預金については、すぐに使用できるか、解約に制約がないかを確認してから含めます。
帳簿残高と銀行残高を確認する
会計ソフト上の預金残高と、実際の銀行口座残高が一致しているか確認します。
未記帳の支払い、クレジットカードの引落し、振込処理中の入出金などがあると、帳簿と実際の残高が異なる場合があります。
資金繰り表では、実際に使用できる残高を基準にしてください。
複数口座を合算する
事業用口座が複数ある場合は、原則としてすべての残高を合計します。
ただし、借入返済専用口座や使用目的が制限されている口座などは、自由に使用できるか確認が必要です。
収入項目を入力する
収入欄には、売上を計上する月ではなく、実際に資金が入る予定の月へ金額を記載します。
現金売上
店舗や現金決済など、販売と同時に受け取る売上です。
ただし、クレジットカードやキャッシュレス決済は、販売日と入金日が異なるため、売掛金回収などとして入金月に記載します。
売掛金回収
請求書ごとの支払条件を確認し、実際の入金予定月へ記載します。
例えば、9月に売上を計上し、支払条件が月末締め翌々月末払いなら、資金繰り表では11月の入金になります。
売上予測をそのまま入金額として入力しないことが重要です。
前受金・着手金
契約時や作業開始前に受け取る資金です。
建設業、受託制作、システム開発などでは、着手金や中間金を設定することで資金繰りを改善できる場合があります。
補助金・助成金
採択予定額ではなく、実際に入金が見込まれる時期へ記載します。
実績報告や審査の進捗によって入金が遅れる可能性を考え、保守的に見積もります。
採択前の補助金は、確定した収入として扱わず、別の資金繰りも作成すると安全です。
借入金
金融機関からの借入金は、融資実行によって入金される月へ記載します。
相談中や審査中の融資を確定した入金として扱わないようにしてください。
確定前の融資を含む場合は、「融資を受けられた場合」と「受けられなかった場合」の2通りを作成します。
支出項目を入力する
支出欄には、費用を計上する月ではなく、実際に資金を支払う予定の月へ記載します。
仕入れ・材料費
仕入先ごとの締日と支払条件を確認します。
現金仕入れと買掛金の支払いを分けると、支払時期を把握しやすくなります。
外注費
外注先ごとに支払日を確認します。
工事や制作案件では、売上の入金前に外注費を支払うケースがあるため、案件ごとに入出金を対応させると分かりやすくなります。
人件費
給与の支給日、役員報酬、賞与などを記載します。
給与から預かった税金や社会保険料の納付も、実際の支払月へ記載してください。
固定費
家賃、リース料、通信費、システム利用料、保険料などを記載します。
年払いや半年払いの費用は、毎月均等に記載するのではなく、実際に支払う月へ全額を記載します。
税金・社会保険料
法人税、消費税、固定資産税、源泉所得税、社会保険料などを記載します。
支払月に大きな金額が集中する場合は、毎月一定額を別口座へ移して準備する方法もあります。
借入金の返済
元金返済と利息を区分して記載すると、返済負担を把握しやすくなります。
返済予定表を確認し、すべての金融機関の返済額を反映してください。
設備投資
設備代金、工事費、運送費、設置費などを、実際に支払う月へ記載します。
補助金を利用する設備であっても、補助金入金前に全額を支払う場合は、支払額の全額を記載します。
財務収支を入力する
財務収支では、借入れと元金返済などを整理します。
財務収支 = 財務収入 − 財務支出
例えば、借入金500万円が入金され、同じ月の元金返済が80万円なら、財務収支は420万円です。
500万円 − 80万円 = 420万円
ただし、420万円の資金が増えても、借入金500万円の返済義務が発生しています。
資金繰り表だけでなく、借入金一覧も作成し、借入残高と毎月返済額を管理してください。
借入金で営業収支の赤字を埋め続けていないか確認する
営業収支が継続的にマイナスで、借入金によって月末残高を維持している場合は注意が必要です。
一時的な売掛金の増加や大型受注への対応であれば、売掛金回収後に改善する可能性があります。
一方、売上総利益の不足や固定費の過大が原因の場合、借入れだけでは根本的に改善しません。
翌月繰越残高を計算する
基本的な計算式は次のとおりです。
翌月繰越残高 = 前月繰越残高 + 営業収支 + 財務収支 + その他の収支
翌月繰越残高は、その次の月の前月繰越残高になります。
計算式をExcelなどに設定すれば、一つの月を修正したときに、それ以降の残高も自動的に変わります。
マイナスになる月だけを見ない
残高がマイナスになる月は明確な対応が必要ですが、プラスであれば安全とは限りません。
例えば、月末残高が50万円でも、翌月初めに給与300万円を支払う予定なら、実質的には資金不足です。
月末残高だけでなく、月内の支払日も確認してください。
資金が厳しい場合は、月次表に加えて日次または週次の資金繰り表を作成します。
資金繰り表の具体的な記入例
卸売業を営む会社の3か月分の資金繰りを考えます。単位は万円です。
| 項目 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|
| 前月繰越 | 500 | 430 | 160 |
| 売掛金回収 | 800 | 650 | 900 |
| その他の営業収入 | 20 | 20 | 20 |
| 営業収入合計 | 820 | 670 | 920 |
| 仕入代金 | 500 | 550 | 480 |
| 人件費 | 180 | 180 | 180 |
| 家賃・その他経費 | 100 | 100 | 100 |
| 税金 | 0 | 80 | 0 |
| 営業支出合計 | 780 | 910 | 760 |
| 営業収支 | 40 | ▲240 | 160 |
| 借入金入金 | 0 | 0 | 0 |
| 借入金元金返済 | 80 | 80 | 80 |
| 財務収支 | ▲80 | ▲80 | ▲80 |
| 設備購入 | 30 | 0 | 0 |
| 翌月繰越 | 430 | 110 | 240 |
※11月の前月繰越は、10月末の430万円です。表内の各月を連続して計算する場合は、前月の翌月繰越と一致させます。
この例では、11月に売掛金回収が減少する一方、仕入代金と税金の支払いが増えています。
11月末時点では残高が残っていますが、翌月の仕入れや給与を考えると余裕がありません。
この会社は10月の段階で、次の対応を検討する必要があります。
- 11月の売掛金入金予定を再確認する
- 支払期限を過ぎた売掛金を回収する
- 不要不急の仕入れや設備投資を見直す
- 仕入先へ支払条件を相談する
- 取引金融機関へ早めに相談する
- 在庫の販売や処分を進める
- 12月以降も残高が回復するか確認する
重要なのは、11月末に資金が少なくなってから動くのではなく、10月の段階で不足の可能性を把握することです。
業種ごとに追加したい項目
業種によって資金の動きが異なるため、必要に応じて項目を追加します。
建設業
- 工事別の売上入金
- 着手金・中間金・完成金
- 材料費
- 外注費
- 労務費
- 保証金や工事保険
- 未成工事に関する支出
工事ごとの入金と支払いを対応させると、どの工事で資金負担が発生しているか確認できます。
運送業
- 運賃収入
- 燃料費
- 車両リース料
- 修繕費
- 保険料
- 高速道路料金
- 車検や税金
車検、保険、税金などの年単位で発生する支出を忘れずに記載します。
製造業
- 製品別・取引先別の売上入金
- 原材料費
- 外注加工費
- 人件費
- 設備修繕費
- 設備購入費
- 電気・ガスなどの動力費
受注増加に伴って原材料や仕掛品が増える場合は、在庫に固定される資金も確認します。
小売業
- 現金売上
- クレジットカード売上の入金
- キャッシュレス決済の入金
- 商品仕入れ
- セールや季節商品の仕入れ
- 店舗家賃
- 決済手数料
販売日とキャッシュレス決済の入金日が異なるため、決済会社ごとの入金予定を記載します。
飲食業
- 現金・カード・デリバリー売上の入金
- 食材費
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- デリバリー手数料
- 厨房設備の修繕費
売上だけでなく、食材の廃棄や曜日別の人員配置が資金繰りへ与える影響も確認します。
資金繰り表を作る際の注意点
売上と入金を混同しない
売上を計上した月ではなく、実際に入金される月へ記載します。
取引先ごとの締日と支払日を確認してください。
費用と支払いを混同しない
経費を計上した月ではなく、実際に口座から資金が出る月へ記載します。
クレジットカード払いは、利用日ではなく原則として引落月に反映します。
未確定の入金を確定扱いしない
商談中の売上、審査中の融資、採択前の補助金などは、確定した入金とは分けて管理します。
未確定分を含む計画と含まない計画を作ると、リスクを確認できます。
消費税を無視しない
売上入金に含まれる消費税を運転資金として使い切ると、納税時に資金が不足する可能性があります。
納税見込額を別に管理し、支払月へ記載します。
賞与や年払い経費を忘れない
毎月発生しない支出ほど見落としやすくなります。
賞与、保険料、固定資産税、車検、更新料、会費などを年間スケジュールから拾い出します。
希望的な数字で作らない
売上は保守的に、支出は漏れなく記載します。
資金繰り表の残高を良く見せることではなく、資金不足を早く発見することが目的です。
毎月更新する
作成しただけで終わらせず、実績が確定したら予定額と置き換えます。
予定と実績の差が大きかった項目について、原因を確認してください。
資金不足が見つかった場合の対応
資金不足が予測された場合は、まず不足する金額と時期を特定します。
例えば、「いつか足りなくなりそう」ではなく、「12月25日の給与支払い後に300万円不足する」と整理します。
そのうえで、次の対応を検討します。
入金を早める
- 請求書を早期に発行する
- 請求漏れを確認する
- 期限を過ぎた売掛金を回収する
- 売掛先へ早期入金を相談する
- 今後の契約で着手金や中間金を設定する
支出を見直す
- 不要不急の購入を延期する
- 在庫の発注量を調整する
- 固定費を削減する
- 支払条件を仕入先へ相談する
- 設備投資の時期や規模を見直す
資産を現金化する
- 滞留在庫を販売する
- 使用していない設備や車両を売却する
- 回収可能な貸付金などを確認する
資金調達を相談する
- 取引金融機関へ融資を相談する
- 日本政策金融公庫へ相談する
- 信用保証付き融資や制度融資を確認する
- 既存の当座貸越枠を確認する
金融機関への相談は、預金がほとんどなくなってからではなく、資金繰り表で不足が判明した段階で行います。
金融機関へ提出する際のポイント
資金繰り表は、金融機関へ融資を相談する際の説明資料にもなります。
提出するときは、数字だけでなく、その根拠を説明できるようにします。
売上入金の根拠
- 過去の入金実績
- 請求書
- 受注書
- 契約書
- 取引先別の回収条件
支出の根拠
- 仕入先別の支払条件
- 給与台帳
- 賃貸借契約
- 設備の見積書
- 借入金返済予定表
- 納税予定
資金不足の原因
資金不足が一時的なのか、継続的なのかを説明します。
一時的な不足であれば、いつ、どの入金で回復するのかを示します。
継続的な不足であれば、売上総利益の改善、固定費削減、在庫圧縮、価格改定などの改善策を説明します。
借入れ後の資金繰り
融資金の入金だけでなく、融資後の元金返済と利息を反映した資金繰り表を提出します。
「借りられれば当面は大丈夫」という説明ではなく、返済を開始した後も資金が維持できることを確認します。
まとめ
資金繰り表は、将来の入金と支出を月ごとに整理し、現金・預金残高の推移を予測する表です。
損益計算書で利益が出ていても、売掛金の回収、在庫の仕入れ、設備投資、借入金の元金返済、納税などによって資金が不足することがあります。
資金繰り表を作成する際は、売上や費用ではなく、実際の入金日と支払日を基準に記載してください。
基本的な計算式は次のとおりです。
翌月繰越残高 = 前月繰越残高 + 当月の収入 − 当月の支出
最低でも今後3か月、可能であれば6~12か月程度の見通しを作成し、毎月実績へ更新します。
資金不足が予測された場合は、不足額と不足日を特定し、売掛金回収、支出の見直し、資産売却、金融機関への相談などを早めに進めることが大切です。
日本政策金融公庫では、簡易版と詳細版の資金繰り表および作成手順・記載例を公開しています。日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」から確認できます。




