補助金・助成金と融資の違い|資金繰りで注意したい入金時期
補助金や助成金は、一般的に返済を必要としない資金として紹介されます。
そのため、設備投資や新規事業を検討する際に、「融資を受けるより補助金を使った方がよいのではないか」と考える方も多いでしょう。
しかし、補助金や助成金は、必要な資金を申し込んだ直後に受け取れる制度とは限りません。
制度によっては、採択や交付決定を受けた後に事業を実施し、事業者が先に費用を支払い、実績報告や検査を経てから補助金が支払われます。
返済不要であっても、補助金が入金されるまでの資金は別に用意しなければならない場合があります。
本記事では、補助金、助成金、融資の基本的な違いを、返済義務、審査、対象経費、入金時期、自己負担、資金繰りの観点から解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度ごとに対象者、対象経費、申請期限、手続き、支給時期などが異なります。実際に申請する際は、必ず最新の公募要領や公式情報をご確認ください。
この記事の要点
- 補助金や助成金は原則として返済不要ですが、受給要件があります
- 申請すれば必ず受け取れるとは限りません
- 補助金では審査や採択が行われる制度があります
- 経費を支払った後に補助金が入金される制度も多くあります
- 対象経費の全額が補助されるとは限りません
- 融資は返済が必要ですが、事業実施前の資金を確保できる場合があります
- 補助金と融資を組み合わせて資金繰りを整える方法もあります
目次
- 補助金・助成金・融資の基本的な違い
- 補助金とは
- 助成金とは
- 融資とは
- 返済義務の違い
- 審査・採択・支給決定の違い
- 入金時期の違い
- 対象経費と自己負担の考え方
- 補助金を資金繰りへ組み込む際の注意点
- 補助金と融資を組み合わせる方法
- 申請前に確認したい項目
- 補助金を利用する具体例
- まとめ
補助金・助成金・融資の基本的な違い
補助金、助成金、融資は、いずれも事業に必要な資金を確保する手段ですが、仕組みは異なります。
補助金
政策目的に沿った事業を支援するため、国や自治体などが事業費の一部を補助する制度です。
公募期間内に申請し、審査を経て採択される制度が多くあります。
採択された後も、交付申請、事業実施、実績報告、検査などの手続きが必要になる場合があります。
助成金
一定の要件を満たした事業者などへ支給される資金です。
事業者向けでは、厚生労働省が取り扱う雇用関係の助成金などが代表的です。
補助金と比べて要件を満たせば支給される性質の制度が多いと説明されることがありますが、要件を満たしているかの審査や確認はあります。
制度によっては予算、受付期間、申請期限なども定められています。
融資
銀行、信用金庫、日本政策金融公庫などから事業資金を借りる方法です。
借りた元金を返済し、契約に応じて利息などを支払います。
審査を通過し契約が完了すれば、設備の購入や経費の支払い前に資金を確保できる場合があります。
補助金とは
補助金は、国や自治体などが進める政策に沿った取り組みを支援する制度です。
対象となる事業には、次のようなものがあります。
- 設備投資
- ITツールの導入
- 販路開拓
- 新商品や新サービスの開発
- 省エネルギー設備の導入
- 事業承継
- 地域活性化
- 海外展開
- 新規事業への進出
ただし、同じ設備投資であっても、すべての補助金で対象になるわけではありません。
制度の目的、対象者、対象経費、実施期間などに合致している必要があります。
補助金は採択されない場合がある
補助金には予算や採択予定件数があり、要件を満たしていても、審査の結果として採択されない場合があります。
申請書では、単に設備が欲しいという説明ではなく、次のような内容を求められることがあります。
- 現在の経営課題
- 実施する事業の内容
- 補助事業の必要性
- 投資によって期待できる効果
- 売上や利益への影響
- 実施スケジュール
- 経費の内訳
- 事業を実行できる体制
評価項目や必要事項は制度ごとに異なるため、申請前に公募要領を確認する必要があります。
採択と入金は同じではない
採択された時点で、補助金が入金されるとは限りません。
一般的には、採択後に交付申請を行い、交付決定を受けてから対象事業を開始します。
その後、事業者が設備代金などを支払い、事業完了後に実績報告を提出し、内容の確認や検査を経て補助金額が確定します。
補助金の請求手続きを行った後に、指定口座へ入金されるという流れがあります。
実際の手続きは制度によって異なるため、採択通知だけで発注や支払いを進めず、交付決定日や対象期間を確認してください。
助成金とは
助成金にはさまざまな種類がありますが、事業者が利用する制度としては、雇用や労働環境の改善を支援するものがよく知られています。
例えば、次のような取り組みを対象とする制度があります。
- 従業員の雇入れ
- 非正規雇用労働者の処遇改善
- 従業員の教育訓練
- 育児や介護と仕事の両立支援
- 労働時間や職場環境の改善
- 雇用の維持
ただし、実際に利用できる制度や要件は時期によって変更されます。
要件を満たせば必ず簡単に受給できるわけではない
助成金は、一定の要件を満たすことで支給を受けられる制度があります。
しかし、申請書を提出するだけで無条件に支給されるものではありません。
次のような項目が確認される場合があります。
- 雇用保険などへの加入状況
- 労働関係法令の遵守状況
- 就業規則や雇用契約
- 対象従業員の雇用状況
- 賃金台帳
- 出勤簿やタイムカード
- 賃金の支払状況
- 事前の計画書提出
- 取り組みの実施時期
- 支給申請期限
事前に計画書などの提出が必要な制度では、取り組みを開始した後に申請しても対象にならない可能性があります。
日常的な労務管理が重要になる
雇用関係の助成金では、申請時だけ書類を作るのではなく、日頃から労務管理を適切に行っていることが重要です。
雇用契約書、就業規則、賃金台帳、出勤簿などの内容に不一致があると、追加確認や不支給につながる可能性があります。
社会保険労務士などへ依頼する場合でも、最終的には事業者自身が申請内容と支給要件を理解しておく必要があります。
融資とは
融資は、銀行や日本政策金融公庫などから資金を借り、契約に従って返済する方法です。
補助金や助成金と異なり、原則として元金の返済が必要であり、利息や保証料などが発生する場合があります。
融資の主な特徴
- 元金の返済が必要
- 利息などの費用が発生する
- 審査がある
- 運転資金や設備資金として利用できる
- 契約後にまとまった資金を受け取れる場合がある
- 返済期間を設けられる
- 補助金より資金使途の自由度が高い場合がある
融資は返済負担がある一方、補助金のように事業終了後まで入金を待つのではなく、事業を実施する前に資金を準備できる可能性があります。
設備代金や仕入代金を先に支払う必要がある場合は、融資の方が資金繰りに合うことがあります。
返済義務の違い
補助金と助成金
適正に受給し、交付条件などを守っている場合、原則として返済は不要です。
ただし、次のような場合には、交付決定の取消しや返還を求められる可能性があります。
- 虚偽の申請をした
- 対象外の経費を申請した
- 補助対象の設備を無断で処分した
- 必要な報告を行わなかった
- 定められた条件を守らなかった
- 不正受給が判明した
- 受給後の義務に違反した
返済不要という言葉を「受け取った後は自由に使える」という意味で捉えないようにしてください。
融資
融資は、契約に従って元金と利息を返済します。
返済期間や返済方法は契約によって異なります。
借入時点では資金が増えますが、その後の毎月返済を資金繰り表へ反映する必要があります。
審査・採択・支給決定の違い
補助金、助成金、融資では、資金を受け取るまでの判断方法が異なります。
補助金の採択審査
申請された事業計画などを、制度の目的や審査項目に沿って評価します。
要件を満たしていても、他の申請内容との比較や予算の範囲などによって採択されない可能性があります。
助成金の支給審査
事業者や対象従業員、実施した取り組み、提出書類などが支給要件を満たしているか確認されます。
取り組みを実施していても、手続きの順序や申請期限を守っていない場合は対象外になることがあります。
融資審査
資金使途、事業実績、財務内容、今後の収支、返済可能性などを確認します。
審査結果によっては、希望額を借りられない場合や、融資を受けられない場合があります。
入金時期の違い
資金繰りの観点では、返済義務だけでなく、いつ資金を受け取れるかが重要です。
補助金
制度によって異なりますが、事業完了後に実績報告や検査を行い、補助金額が確定してから入金される場合があります。
この場合、設備購入費や外注費などは、事業者が先に支払います。
助成金
対象となる取り組みを実施した後に支給申請を行い、審査後に支給される制度があります。
対象従業員への賃金などは、事業者が先に支払う必要があります。
融資
審査と契約が完了すれば、事業実施前に資金を受け取れる場合があります。
ただし、申込みから入金までの期間は金融機関や申込内容によって異なり、希望日に必ず間に合うとは限りません。
対象経費と自己負担の考え方
補助金は、事業費の全額が支給されるとは限りません。
補助率や上限額が設定されている制度が多く、対象外経費もあります。
例えば、対象経費が600万円、補助率が2分の1、補助上限額が250万円の場合を考えます。
補助率だけで計算すると300万円ですが、上限額が250万円であるため、補助予定額は最大250万円です。
事業者の実質的な負担額は、次のようになります。
600万円 − 250万円 = 350万円
さらに、消費税、振込手数料、対象期間外の支出、対象外となる付帯費用などが補助対象外であれば、自己負担額が増える可能性があります。
「補助率2分の1だから半額で設備を購入できる」と単純に判断しないことが重要です。
補助金を資金繰りへ組み込む際の注意点
入金までの立替資金を準備する
補助金が事業完了後に支払われる場合、事業者は対象経費を先に支払います。
設備投資600万円に対して補助金250万円を見込んでいても、設備会社へは600万円を支払わなければならない場合があります。
補助金入金までの資金を、自己資金や融資などで準備します。
採択されない場合も想定する
採択結果が出る前に、「補助金が入る前提」で設備投資や借入計画を確定すると、採択されなかった場合に資金が不足します。
補助金を受けられなかった場合に、投資を中止するのか、規模を縮小するのか、自己資金や融資で実行するのかを事前に決めておきます。
交付決定前に発注しない
制度によっては、交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は補助対象外になります。
公募要領に定められた対象期間を必ず確認してください。
見積書を取得することと、正式に発注することを混同しないよう注意が必要です。
支払方法を確認する
現金払い、クレジットカード払い、相殺などが対象外になる制度もあります。
銀行振込など、支払いの事実と内容を証明できる方法が求められる場合があります。
領収書だけでなく、請求書、振込記録、契約書、納品書などを保管してください。
事業内容を無断で変更しない
採択・交付決定された内容から、設備、金額、発注先、実施時期などを変更する場合、事前承認が必要になることがあります。
変更手続きを行わずに進めると、対象経費として認められない可能性があります。
入金予定を保守的に考える
実績報告に不備がある場合や追加資料を求められた場合は、手続きに時間がかかる可能性があります。
資金繰り表では、希望する入金日ではなく、余裕を持った日程で計画します。
補助金と融資を組み合わせる方法
補助金と融資は、どちらか一方だけを選ばなければならないとは限りません。
補助対象事業の実施に必要な資金を融資で準備し、後日補助金が入金された後に借入金の返済へ充てる方法が検討されることもあります。
一般的な流れは次のようになります。
- 補助事業の計画を作成します
- 補助金へ申請します
- 採択・交付決定後に事業を実施します
- 設備代金などの支払資金を融資で確保します
- 事業者が取引先へ代金を支払います
- 実績報告や検査を受けます
- 補助金が入金されます
- 補助金を借入金の返済などへ充てます
ただし、補助金が不採択になった場合や、予定額より減額された場合にも返済できる計画が必要です。
補助金の入金を返済原資とする場合は、金融機関へ次の資料を提示できるようにします。
- 公募要領
- 申請書
- 採択通知
- 交付決定通知
- 設備などの見積書
- 支払スケジュール
- 補助金の入金予定
- 補助金が減額・不支給となった場合の返済計画
補助金が確実に入金されると断定せず、手続き上のリスクを含めて相談してください。
申請前に確認したい項目
補助金や助成金へ申請する前に、次の項目を確認します。
制度の目的
自社が実施したい事業と制度の政策目的が合っているか確認します。
対象経費に該当するだけではなく、制度がどのような事業を支援したいのかを理解することが重要です。
申請できる事業者
業種、所在地、資本金、従業員数、創業年数などの要件を確認します。
「中小企業向け」と書かれていても、業種によって中小企業の定義が異なる場合があります。
申請期限
申請期限だけでなく、事前登録や電子申請用アカウントの取得に必要な期間も確認します。
締切当日に手続きを始めると、書類不足やシステム上の問題によって申請できない可能性があります。
事業実施期間
発注、契約、納品、支払いを、定められた期間内に完了させる必要がある場合があります。
設備の納期が長い場合は、事業実施期間に間に合うか確認します。
対象経費
設備費、外注費、広告費など、対象となる経費を確認します。
同じ名称の経費でも、内容によって対象外になる場合があります。
補助率と上限額
補助率だけでなく、上限額と下限額も確認します。
申請額が一定額未満では対象にならない制度もあります。
入金時期
採択、交付決定、事業実施、実績報告、検査、請求、入金という流れと、それぞれの時期を確認します。
受給後の義務
一定期間の書類保存、事業状況の報告、取得財産の処分制限などが設けられている場合があります。
補助金を受け取った後の手続きも確認してください。
補助金を利用する具体例
小売業を営む会社が、店舗の業務効率化を目的として600万円の設備を導入するケースを考えます。
利用を検討している補助金は、対象経費の2分の1以内、上限250万円とします。
この場合、補助金の見込額は最大250万円です。
600万円 × 2分の1 = 300万円
ただし、上限額が250万円であるため、補助金の見込額は250万円となります。
会社の自己負担額は、少なくとも350万円です。
600万円 − 250万円 = 350万円
さらに、補助金は事業完了後に入金されるため、会社は設備会社へ支払う600万円を先に準備しなければなりません。
現在の預金から600万円を支払うと、仕入れや給与の資金が不足する場合、次のような対応を検討します。
- 設備資金として金融機関へ融資を相談する
- 補助金入金までのつなぎ資金を相談する
- 設備の導入規模を見直す
- 設備会社と支払条件を相談する
- 自己資金として残すべき金額を計算する
仮に金融機関から600万円を借り、後日250万円の補助金が入金される計画でも、補助金が減額または不支給となった場合に600万円を返済できるか確認する必要があります。
補助金を前提とした投資では、次の三つの資金繰りを作ると判断しやすくなります。
- 予定どおり250万円が入金される場合
- 補助金が予定より減額される場合
- 補助金を受け取れない場合
最も厳しい場合でも事業を継続できる投資額か確認してください。
まとめ
補助金、助成金、融資は、いずれも事業を支える資金ですが、仕組みや入金時期が異なります。
補助金は政策目的に沿った事業を支援するもので、審査や採択が行われる制度があります。
助成金は一定の要件を満たす事業者などに支給される制度ですが、申請手続きや支給審査があり、無条件で受け取れるものではありません。
融資は返済が必要ですが、審査・契約後に事業実施前の資金を確保できる場合があります。
補助金や助成金は原則として返済不要である一方、事業者が先に費用を支払い、実績報告などを経てから入金される制度があります。
そのため、返済不要という理由だけで融資より有利と判断するのではなく、次の項目を比較してください。
- 申請できるか
- 採択や支給の可能性
- 対象経費
- 補助率と上限額
- 自己負担額
- 入金までの期間
- 先に必要となる資金
- 受給後の手続き
- 不採択・不支給の場合の対応
補助金情報の検索や電子申請については、Jグランツをご確認ください。
雇用関係の助成金については、厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」で最新情報をご確認ください。




