赤字決算でも融資を受けられる?銀行が確認するポイントと資金調達方法

赤字決算になったからといって、必ず融資を受けられなくなるわけではありません。

金融機関は赤字という結果だけでなく、赤字になった原因、今後の収益改善の可能性、借入金の返済原資、資産・負債の状況などを総合的に確認します。

たとえば、設備の故障による一時的な修繕費で赤字になった会社と、本業の採算悪化によって数年間赤字が続いている会社では、同じ赤字でも状況が異なります。

ただし、赤字の理由を説明できなかったり、改善見込みを数字で示せなかったりすると、融資の判断は慎重になりやすいでしょう。

この記事では、赤字決算の会社が融資を相談する際に整理したいポイント、準備すべき資料、検討できる資金調達方法を具体例とともに解説します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の融資の可否や条件は、金融機関などが個別に判断します。

この記事の要点

  • 赤字決算でも融資を受けられる可能性はあります。
  • 金融機関は赤字額だけでなく、赤字の原因や返済原資も確認します。
  • 一時的な赤字と構造的な赤字では、必要な対応が異なります。
  • 資金繰り表と具体的な改善計画を用意することが重要です。
  • 資金が尽きる直前ではなく、早い段階で相談する必要があります。

目次

  1. 赤字決算でも融資を受けられる可能性はある
  2. 銀行が赤字決算で確認する主なポイント
  3. 一時的な赤字と構造的な赤字の違い
  4. 赤字決算で融資を相談する前に準備したい資料
  5. 赤字決算の会社が検討できる資金調達方法
  6. 融資相談で避けたい説明
  7. 赤字企業の改善計画例
  8. 資金が不足する前に相談することが重要
  9. まとめ

赤字決算でも融資を受けられる可能性はある

赤字決算とは、一定期間の収益より費用が大きくなり、最終的な損益がマイナスになっている状態です。

しかし、決算書に赤字が計上された理由は会社ごとに異なります。

主な原因には、次のようなものがあります。

  • 売上の減少
  • 原材料費や外注費の上昇
  • 人件費の増加
  • 新規出店や採用などの先行投資
  • 設備の故障や災害による臨時支出
  • 在庫や固定資産の評価損
  • 取引先の倒産による貸倒損失
  • 減価償却費の増加
  • 役員退職金などの一時的な費用

赤字のすべてが同じように判断されるわけではありません。

今期だけ発生した一時的な赤字なのか、本業の収益力が低下したことによる構造的な赤字なのかを分けて考える必要があります。

一時的な赤字であり、本業の収益と今後の返済原資を説明できる場合には、融資を検討してもらえる可能性があります。

一方で、本業の赤字が長期間続き、具体的な改善策も決まっていない場合は、新たな借入れだけで問題を解決することが難しくなります。

銀行が赤字決算で確認する主なポイント

赤字の原因を説明できるか

最初に確認したいのは、赤字額だけではなく、その発生原因です。

たとえば、次の2社はいずれも当期純損失が500万円ですが、内容は異なります。

A社の場合

  • 本業の営業利益:300万円
  • 台風被害による臨時修繕費:800万円
  • 当期純損失:500万円

B社の場合

  • 売上高:前年比20%減少
  • 営業損失:500万円
  • 具体的な改善策:未策定

A社は、本業では300万円の利益を確保しています。臨時の修繕費によって赤字になりましたが、翌期に同じ支出が発生しなければ、収益が回復する可能性があります。

一方、B社は本業そのものが赤字であり、改善策も決まっていません。

同じ500万円の赤字でも、今後の返済可能性に対する見方は異なります。

金融機関へ相談するときは、単に「一時的な赤字です」と伝えるのではなく、損益計算書のどの項目が、どのような理由で、いくら悪化したのかを説明します。

営業利益と経常利益の状況

当期純利益だけでなく、営業利益や経常利益も確認されます。

営業利益は、本業から得られた利益を示す指標です。営業赤字が続いている場合、既存事業で人件費や家賃などの固定費を賄えていない可能性があります。

一方で、営業利益が黒字でも、借入金の利息や一時的な損失によって最終赤字になる場合があります。

決算書は、次の順番で確認してください。

  1. 売上総利益
  2. 営業利益
  3. 経常利益
  4. 税引前当期純利益
  5. 当期純利益

どの段階から赤字になっているのかによって、必要な改善策が変わります。

売上総利益の段階から不足している場合は、販売価格や原価の見直しが必要です。

売上総利益は確保できているものの営業赤字になっている場合は、人件費、家賃、広告費などの固定費を確認します。

減価償却費を考慮した返済原資

減価償却費は費用として計上されますが、その期に同額の現金が出ていくとは限りません。

そのため、簡易的に返済原資を確認する際には、次の計算が使われることがあります。

簡易キャッシュフロー=当期純利益+減価償却費

たとえば、当期純損失が300万円で、減価償却費が800万円の場合、簡易キャッシュフローは次のように計算できます。

マイナス300万円+800万円=500万円

決算上は赤字でも、簡易キャッシュフローは500万円のプラスです。

ただし、この500万円をそのまま借入金の返済に充てられるとは限りません。

売掛金や在庫の増加、設備投資、税金の支払いなども現金残高に影響します。また、減価償却費を加えれば必ず融資を受けられるという意味でもありません。

実際の入出金を記載した資金繰り表と合わせて確認する必要があります。

借入金の返済負担

既存の借入金が多く、毎月の返済額が大きい場合、新たな融資を受けても資金繰りが改善しない可能性があります。

次の項目を借入金一覧表にまとめてください。

  • 金融機関名
  • 当初借入額
  • 現在残高
  • 毎月返済額
  • 金利
  • 最終返済日
  • 担保・保証の有無
  • 資金使途

借入金が複数ある場合、決算書の残高だけでは毎月の返済負担を把握できません。

年間返済額と返済原資を比較し、今後も返済を継続できるかを確認します。

債務超過になっていないか

赤字が続いて利益剰余金が減少すると、負債が資産を上回る債務超過になる場合があります。

単年度の赤字と比べて、債務超過は財務上の影響が大きい状態です。

ただし、決算書上の純資産だけではなく、保有不動産の含み益、代表者からの借入金、回収可能な売掛金、実際には販売できない在庫など、資産・負債の実態も確認されることがあります。

会社側でも、決算書に計上されている各資産が実際にどの程度の価値を持つのかを整理しておく必要があります。

税金や社会保険料の滞納がないか

税金や社会保険料の滞納がある場合、融資手続きに影響する可能性があります。

融資制度によっては、納税証明書などの提出が必要です。

未納がある場合は放置せず、税務署や年金事務所などへ相談してください。

資金繰りが厳しいからといって、金融機関へ説明しないまま滞納を続けることは避ける必要があります。

今後の改善計画に根拠があるか

赤字決算の会社が融資を相談する場合、今後の改善見込みを数字で説明することが重要です。

「営業を強化して黒字化します」という説明だけでは、実現可能性を確認できません。

改善策は、次のように金額へ置き換えます。

  • 不採算商品を廃止し、月30万円の損失を削減
  • 販売価格を平均5%改定し、月50万円の粗利益を増加
  • 倉庫を統合し、月20万円の賃料を削減
  • 外注工程を内製化し、月40万円の費用を削減
  • 新規契約3社により、月60万円の粗利益を確保

それぞれの施策について、実施時期、担当者、必要費用、見込効果を記載すると、計画の具体性が高まります。

一時的な赤字と構造的な赤字の違い

赤字決算への対応では、赤字を「一時的な赤字」と「構造的な赤字」に分けて考えると整理しやすくなります。

一時的な赤字

一時的な赤字の例は次のとおりです。

  • 設備故障による多額の修繕費
  • 災害による休業
  • 取引先の倒産による貸倒損失
  • 新店舗や新事業への先行投資
  • 役員退職金の支給
  • 不要資産の処分損

一時的な費用を除けば本業で利益が出ており、翌期以降に同じ支出が発生しない場合は、その点を資料で説明します。

たとえば、修繕費が原因であれば、修繕内容、支払額、工事が完了したことを示す資料を用意します。

構造的な赤字

構造的な赤字の例は次のとおりです。

  • 販売価格が原価上昇に追いついていない
  • 不採算商品や不採算顧客が多い
  • 売上規模に対して固定費が大きい
  • 借入金の返済負担が重い
  • 市場縮小により受注が減り続けている
  • 在庫の滞留や廃棄が恒常化している

構造的な赤字の場合、追加融資だけでは問題を先送りする可能性があります。

値上げ、不採算部門の縮小、固定費削減、在庫圧縮、返済条件の見直しなどを含む経営改善が必要です。

赤字決算で融資を相談する前に準備したい資料

金融機関へ相談する際は、少なくとも次の資料を準備します。

  • 直近3期分の決算書
  • 最新の試算表
  • 月次売上推移表
  • 資金繰り表
  • 借入金一覧表
  • 売掛金・買掛金の明細
  • 赤字原因の説明資料
  • 経営改善計画
  • 受注書や契約書
  • 設備資金の場合は見積書
  • 納税証明書などの指定書類

赤字原因の説明資料

赤字原因は、文章だけでなく金額で示します。

説明例

前期は原材料価格の上昇により、売上総利益が前年比700万円減少しました。また、工場設備の故障に伴う修繕費300万円が発生し、当期純損失は500万円となりました。

当期は主要商品の価格を平均6%改定しており、既存受注量を前提に年間約600万円の粗利益改善を見込んでいます。設備修繕は前期中に完了しており、同額の支出は予定していません。

このように、「なぜ赤字になったのか」と「なぜ今後改善するのか」を対にして説明します。

資金繰り表

資金繰り表には、売上や利益ではなく、実際の入金日と支払日を記載します。

少なくとも今後6か月程度について、次の項目を整理してください。

  • 売掛金の入金予定
  • 仕入代金や外注費の支払予定
  • 給与と社会保険料
  • 税金
  • 家賃やリース料
  • 借入金返済
  • 設備代金
  • 臨時支出
  • 月末の現預金残高

これにより、いつ、いくら資金が不足するのかを説明できます。

赤字決算の会社が検討できる資金調達方法

取引金融機関への融資相談

最初に、会社の取引状況を把握している銀行や信用金庫へ相談します。

資金が尽きる直前ではなく、資金不足が予想された時点で相談してください。早期に相談するほど、資料作成や改善策を検討する時間を確保できます。

希望金額は「借りられるだけ」ではなく、資金繰り表から計算します。

たとえば、今後6か月で最も預金残高が少なくなる月に800万円不足し、安全資金として200万円を確保したい場合、希望額を1,000万円とする根拠を説明できます。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫では、中小企業や小規模事業者を対象とした各種融資制度を取り扱っています。

利用できる制度や条件は、事業者の状況、資金使途、申込時期などによって異なります。

赤字であることだけを理由に一律の結論が決まるわけではありませんが、審査によって融資を受けられない場合もあります。

申込みを検討する際は、日本政策金融公庫の公式サイトで最新の制度内容を確認してください。

信用保証協会の保証付き融資

信用保証協会の保証を利用し、銀行や信用金庫から融資を受ける方法です。

自治体によっては制度融資を設けている場合があります。

対象者、資金使途、融資限度額、保証料補助などの条件は地域や制度によって異なるため、本店所在地を管轄する自治体や信用保証協会へ確認してください。

経営改善計画の策定支援

赤字が続いている場合や、借入金の返済負担が大きい場合は、専門家の支援を受けて経営改善計画を作成する方法があります。

計画には、赤字の原因、具体的な改善策、数値計画、資金繰り、借入金返済計画などを記載します。

中小企業庁は、認定経営革新等支援機関などによる経営改善計画策定支援に関する情報を公開しています。利用を検討する場合は、最新の制度内容を公式サイトで確認してください。

ファクタリング

ファクタリングは、保有する売掛債権を売却し、入金日前に資金化する方法です。

融資とは異なる仕組みですが、手数料が発生します。継続的に利用すると、入金される金額が減り、翌月以降の資金繰りがさらに厳しくなる可能性があります。

契約前には、次の点を確認してください。

  • 手数料の総額
  • 実際に入金される金額
  • 償還請求権の有無
  • 債権譲渡登記の有無
  • 取引先への通知の有無
  • 契約解除の条件
  • 違約金や事務手数料

赤字の原因が本業の採算不足にある場合、ファクタリングだけでは根本的な改善になりません。

融資相談で避けたい説明

「来月には売上が戻ります」

売上回復の根拠が示されていない説明です。

受注書、契約書、見積書、商談状況などを使い、どの取引によって、いつから、いくら売上が増えるのかを示します。

「今回だけ貸してもらえれば大丈夫です」

必要金額や改善策が不明確な説明です。

資金繰り表を作り、融資後の預金残高と返済状況まで示してください。

「減価償却費があるので問題ありません」

減価償却費を加えた簡易キャッシュフローがプラスでも、売掛金や在庫の増加によって現金が不足する場合があります。

損益だけでなく、実際の資金繰りを確認する必要があります。

不利な情報を説明しない

税金の滞納、主要取引先の離脱、不良在庫、未回収の売掛金などを説明しないまま相談すると、後から判明した際に説明の信頼性を損ねる可能性があります。

不利な情報がある場合は、その発生原因と対応策を合わせて説明してください。

赤字企業の改善計画例

ここでは、架空の製造会社を例にします。

現在の状況

  • 年商:1億2,000万円
  • 営業損失:600万円
  • 当期純損失:800万円
  • 減価償却費:500万円
  • 借入金年間返済額:720万円
  • 現預金:700万円

この会社は原材料価格が上昇した一方、販売価格を据え置いていたため、売上総利益率が低下していました。

実施する改善策

  • 販売価格を平均5%改定
  • 不採算商品2品目の販売を終了
  • 材料の仕入先を見直し
  • 倉庫の一部を解約
  • 月次で商品別粗利益を確認

数値計画

  • 値上げによる粗利益改善:年間400万円
  • 不採算商品の廃止:年間250万円
  • 仕入条件の見直し:年間180万円
  • 倉庫賃料の削減:年間120万円
  • 改善効果合計:年間950万円

計画どおりに進んだ場合、営業損失600万円を解消し、約350万円の営業利益を確保する計算です。

ただし、借入金の年間返済額は720万円あるため、利益改善だけで返済負担を十分に賄えるか、設備投資や運転資金も含めて検証する必要があります。

このように、改善計画では売上目標だけでなく、利益と返済原資まで確認します。

資金が不足する前に相談することが重要

赤字決算後に避けたいのは、相談を先延ばしにして預金がほとんどなくなることです。

次の兆候がある場合は、早めに資金繰り表を作成してください。

  • 月末の支払いを翌月の入金で補っている
  • 税金や社会保険料の納付が遅れている
  • 代表者個人からの借入れが増えている
  • 売掛金の入金前に資金が不足する
  • 既存借入金の返済負担が重い
  • ファクタリングを毎月利用している
  • 仕入先への支払い延期を繰り返している

状況が深刻になる前に、取引金融機関、日本政策金融公庫、信用保証協会、税理士、認定経営革新等支援機関などへ相談することが重要です。

まとめ

赤字決算でも、必ず融資を受けられないわけではありません。

一方で、赤字の原因や今後の改善見込みを説明できなければ、融資の判断は慎重になりやすいでしょう。

融資相談の前には、次の点を整理します。

  1. 赤字が発生した原因
  2. 一時的な赤字か構造的な赤字か
  3. 本業の利益と返済原資
  4. 今後必要になる資金の金額と時期
  5. 具体的な改善策と金額効果
  6. 既存借入金の返済負担
  7. 税金や社会保険料の納付状況

「赤字だから融資は無理」と決めつけるのではなく、決算内容と資金繰りを整理し、早い段階で相談することが大切です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です