建設業の資金繰りを改善する方法|資金不足の原因と資金調達の選択肢
建設業では、工事を受注して売上を確保していても、材料費や外注費、人件費の支払いが先行し、資金繰りが厳しくなる場合があります。
とくに、着工から工事代金の回収までに時間がかかる工事では、売上が増えるほど立替負担も大きくなります。
資金が不足したときは、単に借入金を増やすのではなく、次の3点を分けて確認することが重要です。
- 工事そのものの利益が不足しているのか
- 入金と支払いの時期がずれているのか
- 設備購入や納税など、一時的な支出が発生しているのか
この記事では、建設業で資金繰りが悪化しやすい原因、具体的な改善策、利用を検討できる資金調達方法を数値例とともに解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の融資条件や契約条件は、金融機関や各事業者によって異なります。
この記事の要点
- 建設業では、材料費や外注費の支払いが工事代金の入金より先になりやすい傾向があります。
- 売上や受注残が増えていても、工事ごとの採算と入金時期によっては資金不足が発生します。
- 工事台帳と資金繰り表を連動させ、案件別の収支を確認することが重要です。
- 追加工事の請求漏れや入金条件を見直すことで、借入れ以外でも資金繰りを改善できます。
- 融資を相談するときは、必要額の根拠と返済原資を数字で説明します。
目次
- 建設業で資金繰りが厳しくなる主な原因
- 黒字でも資金が不足する理由
- まず作成したい工事別収支表と資金繰り表
- 建設業の資金繰りを改善する具体策
- 建設業が検討できる資金調達方法
- 金融機関へ説明する際に準備したい資料
- 建設会社の資金繰り改善例
- 早めに相談したい資金不足の兆候
- まとめ
建設業で資金繰りが厳しくなる主な原因
材料費や外注費の支払いが先行する
建設業では、工事代金を回収する前に、材料費、外注費、人件費、現場経費などを支払うケースがあります。
たとえば、工事代金3,000万円の案件で、次の支出が先に発生するとします。
- 材料費:900万円
- 外注費:800万円
- 人件費:300万円
- 現場経費:200万円
工事代金を受け取る前に、合計2,200万円の資金が必要です。
着手金や中間金がなく、完成後に一括で入金される契約の場合、会社が工事期間中の費用を立て替えなければなりません。
複数の大型工事が同時に進行すると、利益が見込まれる案件であっても手元資金が不足する可能性があります。
入金までの期間が長い
工事が完成しても、検収や請求手続きによって入金までに時間がかかる場合があります。
たとえば、3月末に工事が完成しても、検収が4月、請求が4月末、入金が5月末となれば、完成から現金回収まで約2か月かかります。
一方で、外注先や仕入先への支払いが4月末なら、工事代金の回収前に支払いが発生します。
会計上は売上や利益が計上されていても、実際の預金残高が増えるとは限りません。
追加工事や変更工事を請求できていない
現場では、当初の契約に含まれていない作業が発生することがあります。
口頭の依頼だけで追加工事を進め、金額や支払条件を決めないまま完成すると、請求額について発注者と認識が食い違う可能性があります。
追加工事については、次の内容を記録してください。
- 依頼日
- 依頼者
- 作業内容
- 見積金額
- 工期への影響
- 承認の有無
- 請求予定日
現場担当者だけで情報を持つのではなく、経理担当者も確認できる仕組みが必要です。
工事ごとの採算を把握できていない
会社全体では利益が出ているように見えても、一部の工事で赤字が発生している場合があります。
見積時点の原価と実際の原価が異なると、想定していた利益が残りません。
とくに確認したいのは、次の費用です。
- 材料費
- 外注費
- 現場担当者の人件費
- 重機や車両の費用
- 運搬費
- 現場事務所などの経費
- 手直しや追加作業の費用
工事完了後だけでなく、工事の進行中にも予算と実績を比較する必要があります。
工期の遅延や手直しが発生する
天候、資材不足、人員不足、設計変更などによって工期が延びると、現場経費や人件費が増加します。
完成が遅れれば、工事代金の入金も遅れます。
さらに、自社の施工ミスによる手直しが発生した場合、追加費用を発注者へ請求できないことがあります。
工程管理の問題は、利益だけでなく資金繰りにも影響します。
納税や賞与などの支払いを見込めていない
消費税、法人税、社会保険料、賞与などの支払いが重なると、通常月より多くの資金が必要になります。
とくに消費税は、預かった金額を売上代金の一部として使用してしまうと、納税時に資金が不足する可能性があります。
年間の納税予定と賞与支給月を資金繰り表へ反映させ、毎月一定額を確保することが大切です。
黒字でも資金が不足する理由
利益と現金は同じではありません。
売上を計上していても、工事代金をまだ回収していなければ、預金残高は増えません。
たとえば、ある月に次の取引があったとします。
- 完成工事高:2,000万円
- 工事原価と経費:1,700万円
- 利益:300万円
- 当月中に支払った費用:1,500万円
- 当月中に回収した工事代金:500万円
損益上は300万円の利益ですが、当月の現金収支は1,000万円のマイナスです。
この状態が複数月続けば、黒字決算を見込んでいても資金不足が発生します。
建設業では、損益計算書だけでなく、工事ごとの入金予定と支払予定を確認する必要があります。
まず作成したい工事別収支表と資金繰り表
工事別収支表
工事別収支表には、次の項目を記載します。
- 工事名
- 発注者
- 契約金額
- 追加工事金額
- 着工日
- 完成予定日
- 入金予定日
- 見積原価
- 実際原価
- 見込利益
- 支払済額
- 今後の支払予定額
当初見積と実績の差額を確認し、赤字になりそうな工事を早めに把握します。
13週間の資金繰り表
月単位の資金繰り表だけでは、月中の資金不足を見落とす可能性があります。
そのため、今後13週間程度について、週ごとの入出金を記載すると状況を把握しやすくなります。
入金項目
- 工事代金
- 着手金
- 中間金
- 追加工事代金
- 借入予定額
- 保有資産の売却代金
支出項目
- 材料費
- 外注費
- 給与
- 社会保険料
- 家賃
- 車両・重機費
- 借入金返済
- 税金
- その他の現場経費
最も預金残高が少なくなる週を確認することで、資金が必要になる時期と金額が明確になります。
建設業の資金繰りを改善する具体策
着手金や中間金を設定する
完成後の一括払いではなく、契約時、着工時、工事の進捗時、完成時などに分けて代金を受け取れれば、立替負担を減らせます。
契約前に、工事金額だけでなく入金条件も確認してください。
既存の取引先に条件変更を求めることが難しい場合は、新規契約から見直す方法もあります。
請求書を早く発行する
請求書の発行が遅れると、入金日も遅くなります。
工事完了報告、検収、請求書発行までの社内手順を決めてください。
必要書類が現場担当者の手元で止まらないように、完成日、検収予定日、請求予定日を一覧で管理します。
追加工事は着手前に書面化する
追加工事が発生した場合は、可能な限り着手前に内容と金額について承認を得ます。
緊急対応で事前承認が難しい場合でも、メールやチャットなど、後から確認できる形で記録を残してください。
追加工事の請求漏れを防ぐことは、利益と資金繰りの両方の改善につながります。
不採算工事の原因を分析する
赤字工事について、単に「見積りが甘かった」と整理するだけでは、同じ問題が繰り返されます。
次のように原因を分けて確認します。
- 材料単価の見積不足
- 外注費の上昇
- 必要人工の見積不足
- 工期延長
- 追加工事の未請求
- 手直しの発生
- 値引き
- 現場管理費の計上不足
原因を次回の見積基準へ反映させることが重要です。
発注と支払いの時期を調整する
仕入先や外注先との信頼関係を前提として、締め日や支払日を見直せる場合があります。
ただし、一方的に支払いを遅らせるのではなく、事前に合意を得なければなりません。
資材を早く発注しすぎている場合は、工程に合わせて発注時期を調整する方法もあります。
建設業が検討できる資金調達方法
銀行や信用金庫の融資
継続的に発生する立替資金や工事の増加に伴う運転資金では、銀行や信用金庫への相談が基本的な選択肢になります。
相談時には、必要金額の根拠を工事別に示します。
たとえば、次のように説明します。
「受注済み工事3件について、材料費と外注費の支払いが工事代金の入金より先行します。今後3か月の最大不足額は1,200万円であり、安全資金300万円を加えた1,500万円を運転資金として希望します。」
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫では、中小企業や小規模事業者を対象とする各種融資制度を取り扱っています。
材料費や人件費などの運転資金、車両や機械などの設備資金について相談できる場合があります。
制度、融資限度額、返済期間、金利などは変更される可能性があるため、申込時点の公式情報を確認してください。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会の保証を利用して、銀行や信用金庫から融資を受ける方法です。
自治体の制度融資を利用できる場合もあります。
保証料、申込条件、手続期間などを確認し、資金が不足する直前ではなく早めに相談してください。
車両・重機のリースや割賦
車両や重機を一括購入せず、リース料や割賦代金として分割で支払う方法です。
導入時の資金負担を抑えられる一方、契約期間全体の支払総額が増える場合があります。
月額だけでなく、総支払額、所有権、中途解約条件、保守費用を比較してください。
ファクタリング
売掛債権を売却し、入金日前に資金化する方法です。
早期に現金を確保できる一方、手数料によって実際の入金額が減少します。
継続的な利用は利益と翌月以降の資金繰りを圧迫する可能性があるため、契約条件と手数料総額を確認してください。
資金化によって時間を確保した後は、入金条件や工事採算の改善も必要です。
金融機関へ説明する際に準備したい資料
融資相談では、次の資料を用意します。
- 直近の決算書
- 最新の試算表
- 資金繰り表
- 借入金一覧表
- 工事別収支表
- 受注工事一覧表
- 工事請負契約書
- 注文書
- 入金予定表
- 設備購入の見積書
- 納税証明書などの指定書類
受注残高だけでなく、各工事からいくらの利益と現金を確保できるかを説明することが重要です。
赤字工事がある場合は、その原因と再発防止策も整理してください。
建設会社の資金繰り改善例
ここでは、架空の建設会社を例にします。
改善前
- 月商:3,500万円
- 材料費・外注費等:3,100万円
- 工事代金の入金:完成後、翌々月末
- 外注費の支払い:翌月末
- 手元資金:1,000万円
- 追加工事の管理:現場担当者ごとに実施
売上は増加していましたが、複数工事の立替負担が重なり、月末の預金残高が不足する見込みでした。
実施した対策
- 13週間の資金繰り表を作成
- 工事別収支表を毎月更新
- 新規契約で着手金20%を設定
- 追加工事を承認書で管理
- 完成から3営業日以内に請求書を発行
- 赤字工事の見積原因を次回の積算基準へ反映
- 受注済み工事を根拠に運転資金を金融機関へ相談
改善後
着手金と請求の早期化によって立替期間が短くなり、追加工事の請求漏れも減少しました。
融資だけに依存せず、契約条件、請求管理、工事採算を同時に見直したことが改善につながりました。
早めに相談したい資金不足の兆候
次の状態が見られる場合は、早めに資金繰り表を作成してください。
- 外注費や材料費の支払い延期を繰り返している
- 税金や社会保険料の納付が遅れている
- 代表者個人からの借入れが増えている
- 売上は増えているのに預金残高が減っている
- 工事ごとの利益が分からない
- 追加工事の請求漏れがある
- 借入金返済を別の借入れで補っている
- ファクタリングを毎月利用している
資金が尽きる直前になると、検討できる方法が限られる可能性があります。
取引金融機関、日本政策金融公庫、信用保証協会、税理士などへ早めに相談することが重要です。
まとめ
建設業では、材料費、外注費、人件費などの支払いが、工事代金の入金より先に発生しやすいため、利益が出ていても資金不足になる場合があります。
資金繰りを改善するためには、次の順番で対応します。
- 工事別収支表を作成する
- 13週間の資金繰り表を作成する
- 着手金や中間金を検討する
- 追加工事の承認と請求を徹底する
- 不採算工事の原因を見積基準へ反映する
- 必要に応じて融資などの資金調達を検討する
資金調達は、資金繰りを安定させるための手段の一つです。
借入れによって時間を確保しながら、工事採算、契約条件、請求管理を改善することが、安定した経営につながります。

