ファクタリングは複数社に申し込める?相見積もり・同時利用・二重譲渡の違い

資金調達を急いでいるとき、複数のファクタリング会社へ申し込み、条件を比較したいと考える事業者もいるでしょう。

結論からいえば、契約前に複数社から見積もりを取ることと、同じ売掛債権を複数社へ譲渡することはまったく異なります。

複数社への相談や相見積もりは比較のために行われますが、すでに譲渡した同一の売掛債権を別の会社にも譲渡する「二重譲渡」は避けなければなりません。

この記事では、複数社への申込み、複数社の同時利用、二重譲渡の違いと、契約前に確認すべきポイントを解説します。

ファクタリングとは

ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権を支払期日前に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る資金調達方法です。

金融庁は、一般的なファクタリングを「売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」であり、法的には債権の売買、つまり債権譲渡契約であると説明しています。
参考:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」

銀行融資のような借入れとは仕組みが異なりますが、手数料が高い契約を繰り返すと、かえって資金繰りが悪化する可能性があります。

ファクタリングの仕組みや手数料を基礎から確認する

複数社へ申し込んでもよい?

契約前に複数のファクタリング会社へ相談し、見積もりを比較すること自体と、同じ売掛債権を複数社へ売却することは分けて考える必要があります。

相見積もりでは、次の項目を比較します。

  • 実際に入金される金額
  • 手数料の金額と計算方法
  • 審査から入金までの時間
  • 債権譲渡登記の有無
  • 売掛先への通知の有無
  • 償還請求権や買戻し義務の有無
  • 契約解除や違約金の条件
  • 必要書類と追加費用

「手数料率〇%」という表示だけで判断せず、最終的な受取金額と契約条件を確認することが重要です。

相見積もりと同時利用の違い

相見積もり

複数社へ同じ条件を伝え、契約前に提示内容を比較することです。

見積もりを取っただけで売掛債権が譲渡されるわけではありません。ただし、申込書や電子契約の操作が正式な契約締結に当たる可能性もあるため、画面や書類の内容を確認せずに手続きを進めないようにしましょう。

複数社の同時利用

異なる売掛債権を、それぞれ別のファクタリング会社へ譲渡するケースです。

たとえば、A社に対する売掛債権をファクタリング会社Xへ、B社に対する別の売掛債権をファクタリング会社Yへ譲渡する形が考えられます。

ただし、既存契約で他社利用が制限されている場合や、包括的に複数の債権が譲渡対象となっている場合もあります。必ず現在の契約書と新しい契約書の両方を確認してください。

二重譲渡

すでに譲渡した同一の売掛債権を、別のファクタリング会社にも譲渡する行為です。

売掛先、請求書番号、請求金額、支払期日などが同じ債権を複数社へ売却してはいけません。意図的に事実を隠して契約すれば、契約解除や損害賠償などの重大なトラブルにつながるおそれがあります。

同じ売掛債権を二重に譲渡してはいけない理由

ファクタリング契約が成立すると、対象となった売掛債権はファクタリング会社へ譲渡されます。その後、元の事業者が同じ債権を自由に再売却できるわけではありません。

また、債権譲渡では、売掛先への通知・承諾や債権譲渡登記などが関係する場合があります。

法務省によると、債権譲渡登記制度は、法人による金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対する対抗要件を簡便に備えるための制度です。
参考:法務省「債権譲渡登記制度とは?」

登記の有無だけで安全性を判断するのではなく、どの売掛債権を、いつ、どの会社へ譲渡したのかを自社でも管理する必要があります。

他社を利用中の場合に確認すること

すでにファクタリングを利用している状態で別の会社へ申し込む場合は、次の順番で確認しましょう。

1.既存契約の対象債権を確認する

契約書を見て、譲渡した売掛債権を特定します。

  • 売掛先
  • 請求書番号
  • 請求金額
  • 支払期日
  • 譲渡日
  • 入金先
  • 債権譲渡登記の有無

2.新しく譲渡する債権と重複していないか確認する

売掛先が同じでも、別の請求に基づく債権である場合があります。口頭で判断せず、請求書や契約書で対象債権を照合してください。

3.既存契約に他社利用の制限がないか確認する

契約によっては、他社への譲渡や追加の資金調達について報告義務が設けられていることがあります。不明点があれば、契約先や弁護士などの専門家へ確認しましょう。

4.新しい会社へ利用状況を正確に伝える

他社利用中であることを隠さず、対象となる売掛債権が別であることを資料で説明します。

3社間ファクタリングとは

検索で見かける「3社間ファクタリング」は、3社のファクタリング会社を利用するという意味ではありません。

通常は、次の3者が取引に関与する仕組みを指します。

  1. ファクタリング利用者
  2. ファクタリング会社
  3. 売掛先

売掛先へ債権譲渡を通知し、売掛先がファクタリング会社へ直接支払うのが一般的な形です。

一方、2社間ファクタリングでは、基本的に利用者とファクタリング会社の間で契約し、売掛金を利用者が回収した後、ファクタリング会社へ支払います。

「3社間」と「3社から資金調達すること」を混同しないようにしましょう。

複数社を比較するときの注意点

手数料ではなく受取額を比較する

事務手数料、登記費用、振込手数料などが別途必要になる場合があります。最終的に口座へ入金される金額で比較しましょう。

買戻し義務を確認する

金融庁は、売掛債権を回収できなかった場合に利用者が買い戻す契約など、実質的に貸付けとみられる事例について注意を呼びかけています。
参考:金融庁「金融サービス利用者相談室」

高額な手数料を繰り返さない

金融庁は、高額な手数料や大幅な割引率による契約を締結すると、資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると注意喚起しています。
参考:金融庁「高額な手数料によるファクタリングの利用に関する注意喚起」

緊急時の一時的な利用だけでなく、入金後の資金繰りまで試算して判断する必要があります。

銀行融資とビジネスローンの違いも比較する

契約前のチェックリスト

契約前に最低限、次の項目を確認してください。

  • 対象債権が既存契約と重複していない
  • 契約先の会社情報と所在地を確認した
  • 手数料を含む総費用を把握した
  • 最終的な受取金額を確認した
  • 売掛先への通知の有無を確認した
  • 債権譲渡登記の有無を確認した
  • 買戻し義務の有無を確認した
  • 違約金と契約解除条件を確認した
  • 契約書の控えを保存した
  • 入金後の資金繰りを試算した

まとめ

複数のファクタリング会社から契約前に見積もりを取り、条件を比較することと、同じ売掛債権を複数社へ譲渡することは別の行為です。

異なる売掛債権であっても、契約内容によっては他社利用が制限されている場合があります。既存契約と対象債権を確認し、新しい会社にも利用状況を正確に伝えましょう。

同一債権の二重譲渡は避け、手数料、受取額、登記、通知、買戻し義務まで確認することが重要です。契約関係が複雑な場合は、契約前に弁護士などの専門家へ相談してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約や法的判断を行うものではありません。

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